最近大学ESS Speechの現役生何人かと話す機会があり、また、Speechを聞いたり読んだりする機会があり、ふと思ったことがあります。

 

―何らかの「病気」をTopicに選んだSpeechで、勝ったものを見た記憶が無い―

もう7月ということで、秋シーズンに向けてTopicを探している人も多いでしょう。 ESS SpeechのTopicとして、最もポピュラーな部類に何らかの「病気」があると思います。

これはとても使い勝手の良いTopicです。PHCS的に考えるなら、Hがほぼ自動的に「命の危険」「身体に何らかのダメージが残る」となり、それは誰にとっても重要な事柄です。

おまけに、自分がその病気にかかった経験や、家族や親しい友達が病気にかかった経験等の経験談があれば、Topicと自分の繋がりも示せます。

そして何より、そのような病気で苦しむ人がいる以上は、その病気の効果的な予防法が周知されていないということです。

かくして、「病気」というTopicは重要かつOriginality抜群の名Topicとして燦然と輝く…

…はずなんですが、私は勝ったものを見たことがありません。私が見たことがないだけで、本当はあるのかもしれませんが、少なくとも私が見た「病気Speech」は全滅しています。(もしもあったら教えてください。このTopicは後述の通り、料理の仕方で失敗している事例を多く見てきたため、成功事例にとても興味があります。)

 

なぜ勝てないのでしょうか?

その敗因は、きっと「Originalityがゼロだから」ではないかと考えています。

「いやいや、『病気』はOriginality抜群じゃん!自分の経験談も出せるし、みんなが知らないことを語れるんだから!」

病気をTopicに選ばれた人はこうおっしゃることでしょう。

私も同じようなことを考えていた時期があります。だから、このTopicを「Originality抜群」という理由で選ばれる方の気持ちもよく分かるつもりです。

ですが、もしあなたが今「病気」をTopicの候補として選ばれているのなら、ご自身が考えているSpeechのFlowと、下記のFlowを比べてみてください。

 


1.Introduction

平和な日常を暮らしていた人物が、病魔に襲われたエピソードを語る
※その多くは自分や自分の家族

2.Problem

病気の概要の説明。「この病気は~という名前で、~という仕組みで起こり、~のような症状が出ます」

3.Harm

  1. この病気は深刻です。なぜなら、命に関わるから!
  2. 恐ろしいことに、この病気は気づかないうちに私達の身体を蝕むのです!
    ※Introductionで紹介した人物が自分の場合、この辺りで「実は、冒頭でお話した病気の患者とは、私なのです!」と衝撃カミングアウト

4.Cause

  • パターンA) この病気は、検査すれば防げるのにほとんど誰も検査を受けていないのです。
  • パターンB) この病気は、~を習慣にすれば防げるのにほとんど誰もそうしていないのです。

5.Solution

  • パターンA) 早期発見のため、検査を受けましょう!
  • パターンB) 予防のため、~を習慣づけましょう!

6.Ending

病気になってから後悔していては遅いのです。
早く行動しましょう!


 




 

…いかがでしょうか?

もし「俺のSpeechはこんなんじゃない!」とおっしゃるのであれば、安心です。

でも、もしこのFlowとあなたのSpeechの大部分が一致していたら、勝てる見込みはかなり低いように感じます。

考えてみてください。

 

  • 「『病気』を早期発見するために、検査を受けましょう」
  • 「『病気』を予防するために、生活習慣を見直しましょう」

 

前者はガンについて、 後者は高血圧等について、 口うるさいくらい【一般的に言われている意見】だと思いませんか?
【一般的に言われている意見】にOriginalityはあるのでしょうか?

もう一度。

『病気』の中身を置き換えてみましょう。

 

  • 「『ガン』を早期発見するために、検査を受けましょう」
  • 「『高血圧』を予防するために、生活習慣を見直しましょう」

 

もう一度。

今度は、◯◯の中に、あなたがTopicとして選んだ病気を入れてみてください。

 

  • 「『◯◯』を早期発見するために、検査を受けましょう」
  • 「『◯◯』を予防するために、生活習慣を見直しましょう」

 

…もう一度、考えてみてください。

本当にそのTopic、Originalityがありますか?

対象とする病気をあまり知られていないものにしただけで、 予防のために身に着けるべき生活習慣をあまり知られていないものにしただけで、 実態としては、よく一般的に言われている「健康のための注意」とあまり変わらないことを述べていませんか?

でも、あなたがそのTopicを選ばれたからには、きっとその病気について、聴衆に向かって叫ばなければならない想いがあるのでしょう。 その病気に苦しんだのは、あなた自身だったかもしれません。あなたのご家族だったかもしれません。あなたの大切な友人や、恋人だったかもしれません。 そしてもしかしたら、その病は決して治らないものなのかもしれません。 あるいは、その病に侵されたあなたの大切な人は、帰らぬ人となってしまったのかもしれません。 あなたは、そんな大切な想いを、必死に振り絞った勇気と悲愴な覚悟を胸に、聴衆に向かって訴えようとしているのかもしれません。

だからあなたはこう言うのかもしれません。

 

「どんな批判を受けようとも、私はこのTopicを変えるつもりはない」

 

それだけの覚悟があるなら、私も止められません。

しかし、そのままつっこんで敗北することが、そのTopicを選んだあなたの本懐ですか?

あなたはその病気について、他の誰よりResearchをしてきたことでしょう。他の誰より特別な経験をしてきたことでしょう。もし自身の経験談を語るのであれば、多くの人々に自分の衝撃的な過去を知られることに、なんのためらいもないわけではないでしょう。

そこまでして得られた反応が、

 

「あなたのSpeechより他のSpeechの方がよく理解できたし、印象に残った」

 

…もう一度、伺います。本当に、悔しくはありませんか?

「病気」をTopicとして選ぶのであれば、そして、それに譲れない想いをかけるのであれば、 今一度、Originalityのある分析を考え直してみましょう。そして、聴衆がその病で苦しむことのない社会を創り出しましょう。

何よりも重い「生命」「人生」と向き合ったあなたのSpeechが、その手に優勝杯をもたらすことを応援しています。

 

 

※筆者注

「まだ知られていない病気の知識を広めること」「病気に直面した経験や、それに対して抱いた想い」
本稿にその価値を否定する意図は一切ございませんし、それらはとても重要な事だと思います。私自身、「病気」をTopicに選んだSpeakerに何人も出会ってきました。彼らひとりひとりの訴えてきた想いの切実さや、その想いから行動を起こしている誠実さはまっすぐに突き刺さってきましたし、そのどれも安易に切り捨てて良いものではないと感じさせられました。
ただ、それで「聴衆を納得させ、印象に残し、行動させ続ける」ためには、一工夫が必要なのではないでしょうか。その発想の基として、「本当にそのTopicでOriginalityが出せているのでしょうか?」という問題意識を提示させていただきました。

 




 


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