
2-1.当日原稿チェック
事前原稿と見比べて、変わっているところだけをチェックします。セッションごとに確認すると楽です。当日原稿の変更には「修正」と「削除」の2ケースがあります。
「修正」の場合、当日原稿の該当部分に網掛けされている場合が多いです。大会によっては変更部分が網掛けされてない場合もあります(運営さん側が不慣れな場合などに多いです)。「削除」の場合は、事前原稿と見比べて、削除部分を確認しましょう。段落ごとにざっと目を通し、行数が減っているかを見ると素早く確認できるでしょう。
2-2.審査
「勝った理由、負けた理由を
説明できる審査を行う」
審査で最も重要なことは、なぜその点数になったのか、なぜその順位になったのかを明確に説明できることです。ここで紹介する審査方法や、得点の集計方法は、すべてその目的を達成するための手段です。審査では、僕が経験から最も合理的に(な)結果を出せると考える審査方法とその手順を紹介します。
① 中間点基準方式を使う
② つけやすい項目からつける
③ QAを考えていない場合は採点を後回しにし、スピーチを聴きながらQAを考える(やむを得ない事情でQAが準備できていない場合)
⇒ 採点に悩む時間を極力少なくし、採点や得点調整をすぐできる状態にする
①中間点基準方式
各採点項目の中間点から、点数を+あるいは-していく方法です。言ってみれば「持ち点制」のようなものです。50点満点の採点項目なら、25点を基準とし、良かったらポイントを+、悪かったらポイントを-します。中間点を基準にするので、採点しやすいのがメリットです。以下の準備を大会前にやっておきます。
例1)段階採点方式のJudging Sheetの場合
評定(アルファベット)に数字を割りあてる
分母をアルファベットの数で割った数値が最低点になります。よって以下のように数字を割り当てます。
5 点満点の項目: A: 5 B: 4 C: 3 D: 2 E: 1
10点満点の項目: A: 10 B: 8 C: 6 D: 4 E: 2
採点する
Cを基準に採点します。良ければB、優れている場合はAを、悪ければD、大幅に改善が必要な場合はEを段階的に付ければいいだけです。これでアルファベットに〇を付けるだけで、自動的に点数が出るようになりました。
例2)自由採点方式のJudging Sheetの場合
各項目の配点を決める
小計50点で項目が5つですから、50 ÷ 5 = 10で、各項目10点満点、中間点は5点にします。
採点する
中間点を基準に、+または-で採点します。この場合は5点を基準に採点します。良ければ6、7、8……、悪ければ4、3、2……、といった具合です。
統合Judging Sheetを作る
項目ごとに配点を決めておくだけでも構いませんが、より簡単に採点できるよう、事前に以下のような表を全項目に書きこんだJudging Sheetを1枚作っておくとさらにいいです。
全ての項目とその配点をマトリクス化したJudging Sheetを事前に用意すると、その1枚を俯瞰しながら、全スピーカーを採点することができます。これによって、リアルタイムに採点調整がしやすくなり、最初のスピーカーと最後のスピーカーで採点に偏りが出るなどの問題を防ぐことができます。
例3)問題と対策
中間点基準方式での採点はJudging Sheetの形式によって、用いるのが難しい場合もあります。さまざまな実例を見てみましょう。
例3-1.)
上の例は、小計が20点ですが、項目が7つあります。20を7で割ると、2.85714285714となり、およそ採点には不便な数字が出てきます。困りましたね。この場合は、
① 便宜的に各項目「3点配点」とし、21点満点で採点する
② 項目ごとの採点をあきらめて、10点を中間点として採点する
などの方法を取りましょう。大会によって、Judging Sheetの形式や配点はさまざまです。形式に合わせて、適宜最善の方法を探してみてください。
中間点基準方式のデメリット
残念ながら、この方法にはデメリットもあります。それは、中間点を基準にするので、得点差が出にくいことです。採点に慎重になりすぎると、点数が40~60点に集中します。よって高得点が出づらくなるとも言えます。全体的にかなり辛目の点数が出やすいため「あのJudgeさんは厳しい」と言われることがあるでしょう。
対策としては、良いと思った項目は積極的に良い点を、悪いと思った項目は積極的に悪い点を、はっきりとつけていくことです。
②つけやすい項目からつける
良くも悪くも、目についた項目・印象に残った項目から採点します(特にDelivery)。その方がスピーカーとスピーチが記憶に残り、リフレの時により具体的なアドバイスができるからです。
③QAを考えていない場合は採点を後回しにし、スピーチを聴きながらQAを考える
何らかの理由で担当のスピーカーのQが用意できていない場合、採点よりコンテンツの把握とQAの提案を最優先に行いましょう。
e.g.)
- 準備の時間が確保できなかった(Judgeの都合)
- 当日原稿がQを準備した事前原稿と別物になっていた(Speakerの都合) など