
動詞の中には、不定詞や分詞が含まれる語法を持つものがあります。いくつか例を挙げてみましょう。
1.動詞 + O + to Vの語法
- expect O to V: OがVするのを期待する
- want O to V: OにVして欲しい
- recommend O to V: OにVするよう勧める
- invite O to V: OがVするよう勧める
- tell O to V: OにVするよう伝える
- ask O to V: OにVするよう頼む
- advise O to V: OにVするよう助言する
- require O to V: OにVするよう求める
- enable O to V: OがVできるようにする
- cause O to V: OがVするのを引き起こす
- persuade O to V: Oを説得してVさせる
- get O to V: OにVさせる
- allow O to V: OがVするのを許す
- force O to V: OにVするのを強いる
- oblige O to V: OにVする義務を負わせる
これらはいずれも「動詞 O to V」という形で使う、不定詞を含んだ動詞の語法です。
また、動詞の語法では次のような用例も取り上げられます。
2.使役/知覚動詞の語法
- make O V原型: Oに(強制的に)Vさせる
- have O V原型: OにVしてもらう
- let O V原型: Oに(自由に)Vさせる
- see O V原型: OがVするのを見る
- hear O V原型: OがVするのを耳にする
- feel O V原型: OがVするのを感じる
上の3つは「使役動詞の語法」、下の3つは「知覚動詞の語法」として知られるものです。世にいう受験参考書では「動詞の語法」や「不定詞」と言った単元で登場します。不定詞で登場する理由としては、「V原型」という形が、原型の形をした不定詞(to V)「原型不定詞」だと考えられるためです。
さらに動詞の語法には、不定詞のみならず、分詞を含むものも登場します。
3.分詞を含む語法
- have O Vp.p.: Oが~される/~されてしまう<受身・被害>
- see O V-ing: OがVしているのを見る<知覚動詞>
動詞の語法では、こうした不定詞や分詞――「準動詞」を含む語法が、用法別にまとめられていますが、より幅広い視点で見れば、これらは文型を使って体系的に整理することができます。
文型を使って動詞の語法を整理する
こうした語法を一気に整理する方法、それは、これらの語法に含まれる準動詞を、補語(Complement)として処理することです。言い換えると、これらの語法を第5文型(SVOC)にみなすということです。いささか乱暴ですが、論理的には可能であると言えます。例を挙げてみましょう。
前提
第5文型は、主語(S)・動詞(V)・目的語(O)・補語(C)の4つの要素で構成されます。概ね「OがC(という状態)であるのをVする」と考える文型です。OとCの間には、主語・述語関係が成立し、O=Cとなります。Cに置かれる品詞は「名詞(句)」あるいは「形容詞(句)」と決まっています。
1.動詞 + O + to Vの場合
“動詞 + O + to V”の場合、これを第5文型に当てはめると、不定詞の”to V”をCとして扱えます。すると「OをV(という動作を行う)状態にする」とみなすことができるわけです。文法上、補語には形容詞または名詞を用いますが、不定詞には形容詞的用法がありますから、補語として扱っても理論上は問題がありません。
2.使役/知覚動詞の場合
使役動詞/知覚動詞などで、不定詞の位置に「原型不定詞」が用いられる場合も同様です。原型不定詞は不定詞の一種と考えられるためです。使役動詞の場合、「OをV(する状態に)させる」と考え、知覚動詞の場合「OがV(する状態であるのを)~する」と捉えます。
3.分詞を含む語法
分詞の場合も同様です。「受身・被害を表すhave」の場合、過去分詞の部分が「~された状態」であることを説明しています。知覚動詞の場合も、現在分詞の部分は「~している状態」を現します。分詞は形容詞と同様、名詞を修飾したり説明したりする性質を持つため、やはりCとみなすことが出来ます。
以上のように、第5文型という枠組みを使うと、to Vや原型不定詞、分詞などでバラバラに登場する動詞の語法を「動作を行う状態」とみなし、1つのカテゴリーで整理することができます。